「見える複利」と「見えない複利」― インデックスファンドで複利が効く仕組みをグラフで徹底解説
1. 複利とは?
複利とは、投資で得たリターンを元本に組み入れて再投資することで、「増えた分にもさらにリターンがつく」仕組みのことです。
たとえば100万円を年利5%で運用する場合を考えてみましょう。
1年目:100万円 × 5% = 5万円の利益 → 合計105万円
2年目:105万円 × 5% = 52,500円の利益 → 合計1,102,500円
3年目:1,102,500円 × 5% = 55,125円の利益 → 合計1,157,625円
2年目以降、利益が毎年少しずつ増えているのがわかりますか?これは前年の利益にもさらに5%がかかるからです。1年だけ見ると些細な差ですが、これが10年、20年と積み重なると劇的な違いになります。
一方、利益を再投資しない場合を「単利」と呼びます。単利では毎年もらえる利益はずっと5万円のまま。この差がどれだけ開くかは、次のセクションのグラフで見てみましょう。
2. 具体例で見る複利の威力
スライダーを動かして、元本・利回り・期間を変えてみてください。複利(実線)と単利(破線)の差が、時間とともに加速度的に開いていくのが体感できるはずです。
※ 以下の表は複利と単利の差を示す一例です(元本100万円・年利5%・30年の場合)。
| 年数 | 複利(万円) | 単利(万円) | 差額(万円) |
|---|---|---|---|
| 10年後 | 163 | 150 | +13 |
| 20年後 | 265 | 200 | +65 |
| 30年後 | 432 | 250 | +182 |
ポイント:利回りが同じでも、時間が長ければ長いほど複利の効果は劇的に大きくなります。投資において「時間」は最大の武器です。
3. インデックスファンドの「見えない複利」
「複利って配当を再投資する話でしょ? でもeMAXIS SlimのS&P500とかオルカンって配当金が出ないよね? じゃあ複利は効いてないの?」
これはよくある疑問ですが、答えは「しっかり効いている」です。
eMAXIS Slim S&P500やオルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)のようなインデックスファンドは、構成銘柄から受け取った配当金を投資家に渡さず、ファンドの中で自動的に再投資しています。つまり「自分で配当を受け取って再投資する」という作業を、ファンドが勝手にやってくれているのです。
👁 見える複利 vs 🔮 見えない複利
| 見える複利 | 見えない複利 | |
|---|---|---|
| 仕組み | 配当株・ETFで配当金を受け取り、自分で再投資する | インデックスファンド内で配当が自動再投資される |
| 手間 | 手間がかかる | 手間なし |
| 課税 | 配当受取時に約20%課税される | 再投資時に課税なし。基準価額に反映される |
税金の差は大きい:配当を受け取ると約20%の税金がかかりますが、ファンド内で再投資される場合は課税されません。つまり税金で目減りする前の金額がまるごと複利の元本に加わるため、長期的には「見えない複利」の方が効率的です。
4. プライスリターン vs トータルリターン
ここで一つ重要な事実をお伝えします。ニュースで普段目にする「S&P500指数」や「日経平均株価」は、実は配当を含んでいません(プライスリターン指数)。
つまり株価の値動きだけを追ったもので、企業から出る配当金のリターンが計算に入っていないのです。一方、配当を再投資した前提で計算した「トータルリターン指数」というものが別に存在します。
以下のイメージ図は、株価のみ(年5%成長)と配当込み(年5% + 配当2%を再投資)を比較したものです。初期値を100として30年間の推移を見ると、30年後には大きな差が生まれます:
| 年数 | プライスリターン(株価のみ・5%) | トータルリターン(配当込み・7%) |
|---|---|---|
| 10年後 | 163 | 197 |
| 20年後 | 265 | 387 |
| 30年後 | 432 | 761 |
eMAXIS Slim S&P500のようなファンドは配当を内部で再投資しているため、トータルリターン指数に近い値動きをします(信託報酬の分だけわずかに下回ります)。つまり普段のニュースで見るS&P500のチャートよりも、実際のリターンは良い可能性があります。
5. 日経平均の「失われた30年」の真実
「日経平均はバブル期の最高値をなかなか超えられなかった。だから日本株はダメだ」— こう思っている人は多いのではないでしょうか。
確かに、日経平均株価(プライスリターン)は1989年末の約38,916円から、34年かけて2024年2月にようやくその水準を回復しました。
しかしここで思い出してください。普段のニュースで見る日経平均は配当を含んでいないのです。
日経平均にも「日経平均トータルリターン・インデックス」が存在します。日経平均の構成銘柄の平均配当利回りは歴史的に1.5%前後と言われていますが、この配当を再投資していた場合、配当なしの日経平均とは大きな差が生まれます。
「失われた30年」は本当か?
配当込みのトータルリターンで見ると、日経平均が34年かけて回復した最高値を、配当再投資込みではそれより早く実質的に取り戻していたことになります。配当の力、つまり複利の力は、株価チャートだけでは見えてこないのです。
ちなみに、この話はS&P500にも当てはまります。ニュースで報道されるS&P500のチャートはプライスリターンなので、配当込みの実際のリターンはそれよりも高いのです。
6. 現在のトータルリターン指数を見てみよう
では実際に、プライスリターンとトータルリターンの現在の数字を比べてみましょう。配当の積み重ねがどれだけの差を生んでいるか、一目瞭然です。
| 指数 | プライスリターン | トータルリターン | 差 |
|---|---|---|---|
| S&P 500 | 約7,500 | 約16,517 | 配当込みだと約2.2倍 |
| 日経平均 | 約53,604円 | 約107,181 | 配当込みだと約2.0倍 |
S&P500のトータルリターン指数は1988年1月の基準値247からスタートし、現在は約16,500。日経平均トータルリターン・インデックスは1979年12月の基準値6,569からスタートし、現在は約107,000。どちらも、配当を含まないチャートだけでは見えない膨大なリターンが蓄積されています。
7. 複利の「加速」の正体
ここで一つ気になる疑問が浮かびます。「トータルリターン指数が始まった頃より今の方が数字が大きいんだから、複利の効き方も年々大きくなっているんじゃない? 上昇率は年々上がっている?」
これは鋭い直感ですが、正確には「半分正しくて、半分違う」と言えます。
✅ 正しい部分
「金額ベースの増加幅」は年々大きくなる。指数が1,000のときの5%は50だが、指数が10,000のときの5%は500。複利で元本が膨らむほど、同じ利率でも増える「額」は大きくなる。
❌ 違う部分
「上昇率(%)」が年々上がるわけではない。100が105になるのも、10,000が10,500になるのも、どちらも上昇率は5%。年間リターンの「率」は市場環境で変わるもので、年々加速はしない。
これがまさに複利の本質:上昇「率」は一定でも、上昇「額」は雪だるま式に大きくなっていく。だから複利のグラフは直線ではなく、後半に急カーブを描くのです。
つまりトータルリターン指数の「数字が大きくなった」こと自体が、長年の複利が蓄積された結果です。そしてその大きくなった数字に対して同じ率のリターンがかかるから、金額としてはさらに大きく増える。この好循環こそが、複利が「人類最大の発明」と呼ばれる理由です。
8. まとめ
この記事のポイント
- 🔄 複利 = 利益が利益を生む仕組み:再投資することで元本が膨らみ、時間とともに加速度的に資産が増える。
- 🏦 インデックスファンドでも複利は効く:配当はファンド内で自動再投資。税金も繰り延べされるため、実は自分で再投資するより効率的。
- 📊 チャートに騙されるな:普段目にするS&P500や日経平均は配当を含まないプライスリターン。実際のリターンはもっと高い。
- ⏳ 最大の武器は「時間」:複利の効果は後半に爆発する。だからこそ、一日でも早く始めることが大事。
- 📈 率は一定でも額は加速する:年間リターンの%が上がるわけではないが、元本が大きくなるほど増える金額は雪だるま式に膨らむ。
複利は「お金持ちの秘密」でも「魔法」でもありません。ただのシンプルな算数の仕組みです。でもそのシンプルな仕組みが、長い時間をかけたときに驚くほどの力を発揮する — それが複利の本当のすごさです。
大事なのは、仕組みを正しく理解した上で、できるだけ長く市場に居続けること。インデックスファンドに投資しているあなたは、すでに「見えない複利」の恩恵を受けています。あとは時間を味方につけるだけです。
※ この記事は投資の勧誘を目的としたものではありません。
※ 投資は元本割れのリスクがあります。最終判断はご自身でお願いします。
※ シミュレーションは仮定の数値であり、将来のリターンを保証するものではありません。


コメント