「円安の今、S&P500を買うのは怖い」は本当か?

投資

1ドル160円で積み立て続けたあと、100円に戻ったら——
数字で冷静に検証してみた。

はじめに——あなたの不安、よくわかります

「S&P500やオルカンに興味はあるけど、今は円安だから始めるのが怖い」。

SNSやYouTubeで投資情報を見るたびに、こんな不安が頭をよぎる人は多いのではないでしょうか。

1ドル=160円前後という水準は、歴史的に見てもかなりの円安です。ここからもし円高に振れたら、せっかくの投資が為替差損で台無しになるんじゃないか——そう心配するのは当然のことです。

でも、その「怖い」は、本当に数字で裏付けられた恐怖でしょうか?

今回は、最悪に近いシナリオ——1ドル=160円で20年間積み立てた直後に、1ドル=100円まで円高が進む——をシミュレーションして、実際に資産がどうなるのかを見ていきます。

シミュレーションの前提条件

項目条件
積立額毎月25万円(年間300万円)
積立期間20年間(240ヶ月)
為替レート1ドル=160円で固定
S&P500リターン年率5%(控えめな想定)
為替ショック20年後に突然1ドル=100円になる

年5%という数字は、S&P500の過去の長期平均リターン(配当込みで年7〜10%)と比べてもかなり控えめな設定です。あくまで「最悪寄り」のシナリオで考えます。

20年間、コツコツ積み立てた結果

1ドル=160円なので、毎月25万円で買えるのは約1,562ドル。円高時代と比べると、同じ金額で買えるドル資産は少なくなります。ここが「怖い」と感じるポイントですよね。

しかし、20年間コツコツ積み立てを続けると——

項目金額
投資元本(円)6,000万円(25万 × 240ヶ月)
ドル建て資産$632,268
円換算(@160円)約1億116万円
リターン+68%

6,000万円が約1億円に。20年の複利の力は、やはり強力です。

さて、ここまでは誰も怖くありません。問題はこの次です。

💥 突然、1ドル=100円になったら

20年間かけて築いた資産の直後に、為替が160円 → 100円へ急変するシナリオです。37.5%もの円高。これは相当に極端な想定です。

タイミング円換算資産
為替ショック前(@160円)約1億116万円
為替ショック後(@100円)約6,323万円
為替差損−約3,793万円
元本6,000万に対して+323万円(元本超え✅)

一瞬ギョッとする数字です。約3,800万円が為替だけで吹き飛ぶ。

しかし、最も重要な数字に注目してください。

元本6,000万円に対して、約6,323万円。37.5%という歴史的な円高ショックを受けても、元本を割っていないのです。

なぜ元本を上回れるのか?

20年間の年5%の複利成長が、為替の下落を吸収しているからです。もし株価が一切成長しなければ、100円換算での資産は3,750万円——元本6,000万円に対して2,250万円の大赤字です。

つまり、S&P500の成長力が約2,573万円ぶんの「クッション」になっています。

ドル建て資産は1ドルも減っていない

ここで忘れてはいけない重要な事実があります。

為替が160円から100円になっても、あなたが保有するS&P500の株数は1株も減りません。ドル建て資産の$632,268はそのまま。減ったのは「日本円に換算したときの数字」だけです。

つまり、円に戻さない限り、損失は確定しません。S&P500がその後も成長を続ければ、ドル建て資産はさらに増えていきます。そして為替は永遠に一方向には動きません。

「じゃあ円高のときに始めた方が得なのでは?」

もちろんその通りです。同じ6,000万円を、最初から1ドル=100円で積み立てられたら——

シナリオ最終資産(円換算)
ずっと160円で積立(160円のまま)約1億116万円
ずっと100円で積立(100円のまま)約1億116万円
160円で積立 → 100円に暴落約6,323万円
投資元本6,000万円

面白い発見があります。「ずっと160円」と「ずっと100円」の円建ての最終資産は同じです。

為替が変わらなければ、どちらの水準で始めても「投入した円が何%増えたか」は同じ。S&P500の成長率は為替に関係ないからです。差がつくのは「為替が途中で変わったとき」だけ。そして、それがいつ・どの方向に動くかは誰にも予測できません。

「怖い」の正体を整理する

ここまでの数字を踏まえて、「円安だから投資が怖い」の正体を分解してみましょう。

恐怖①「円高になったら大損するのでは?」

→ 37.5%もの極端な円高でも、20年の複利があれば元本割れしない。10年では元本割れするが、積立期間が長いほど為替リスクは薄まる。

恐怖②「円高を待ってから始めた方がいいのでは?」

→ 円高がいつ来るかは誰にもわからない。もし来なければ、「待っていた期間」の複利を丸ごと失う。これは為替差損よりはるかに大きなコストになりうる

恐怖③「今の160円は高すぎるのでは?」

→ 為替が変わらなければ、どの水準で始めても円建てリターンは同じ。「高い」「安い」は事後的にしかわからない。

10年と20年で何が違うのか

実は同じシミュレーションを積立10年でも試しました。10年間160円で積み立てた後に100円になると——

項目10年積立の結果
投資元本3,000万円
100円換算の資産約2,420万円
元本比−580万円(元本割れ⚠️)

10年では元本割れ。しかし20年では元本超え。この違いは何か。複利が効く時間です。

年5%の成長でも、初期に投じたお金は20年で約2.65倍、10年では約1.63倍にしかなりません。積立期間が長くなるほど、初期のお金に複利が乗り、為替ショックに対する「バッファ」が厚くなるのです。

つまり、「円安が怖くて始められない」→「始めるのが遅れる」→「複利が貯まらない」→「為替リスクに弱くなる」という皮肉な構造になっています。

怖いから始めないことが、実はリスクを高めている可能性があるのです。

じゃあ、どうすればいい?——この記事のまとめ

  • 長期積立の最大の味方は「時間」であり、「為替」ではない。
  • S&P500の年5%成長は、20年あれば37.5%の円高すら吸収する
  • 為替は予測不能。「円安だから」「円高だから」で投資タイミングを図ることは、実質的に為替の予測に賭けることと同じ。
  • 始めないリスクは、為替リスクより大きいかもしれない。
  • 毎月の積立で「ドルコスト平均法」は株価だけでなく、為替にも効く。
  • 不安なら金額を小さく始めればいい。月1万円でも、月5万円でも、始めること自体に価値がある
  • 「完璧なタイミング」を待つより、「長い時間」を味方につける方が合理的。

もちろん、投資にリスクはつきものです。S&P500が年5%で成長する保証もなければ、為替が100円になる保証もありません。しかし「怖いからやらない」を選んだ場合、失うのは元本ではなく時間です。そして時間だけは、取り返すことができません。

※ 本記事のシミュレーションは特定の前提条件に基づく仮想計算であり、実際の投資成果を保証するものではありません。税金・手数料・配当再投資の詳細は考慮していません。投資は自己責任で行い、必要に応じてファイナンシャルアドバイザー等の専門家にご相談ください。

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